司法書士法人Judicial Scrivener Corporation小山鈴子事務所Oyama Suzuko Office

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相続登記と登録免許税の話

 

 太田です。

 連日、猛暑が続いています。皆様、熱中症にはお気を付け下さい。

 

 先日の豪雨災害で被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。

 自衛隊や関係各機関の方々、ボランティアで現地のお手伝いをされている方など、本当に頭が下がります。他人事ではなく、日本中どこで起こってもおかしくない災害です。お互い様の精神で、少しずつでもできる支援を続けていきたいと思っています。

 

 さて、近年、法律の世界では、民法をはじめ、旧来の制度に対して様々な改革が行われています。相続法とそれに伴う不動産登記の分野もその一つです。

 新聞やテレビでも話題になっているので、ご存じの方も多いと思いますが、「所有者不明土地の問題」というものがあります。法務省はこれを解消しようと、矢継ぎ早に手を打ってきています。本日は、そのような新しい施策の一つをご紹介したいと思います。土地限定の話ですが、相続登記申請の際に納める税金が期間限定で非課税(つまり無料)になるというお話です。

 

 ご家族の誰かがお亡くなりになった場合、相続が発生します。もし、故人が不動産を所有していた場合、相続人が法務局で相続登記の申請をしますが、現在、これは義務ではありません。放っておいても罰則もないですし、登記申請には、不動産の評価額の0.4%という税金を納めなければならないので、「お金がかかるし、今は売るつもりもない。まあ、いいか。」と、そのままになってしまっている不動産が数多くあります。

 相続登記のご相談を受けて登記簿を確認すると、祖父母名義なら割とよくあることで、明治・大正時代の曾祖父母名義になっている不動産に出会うこともあります。

 しかし、このような不動産を売る場合には、前提として相続登記が必要で、相続人の数が何十人、場合によっては100人以上にもなってしまっていて、調査に膨大な手間と費用がかかってしまうことになってしまいます。相続人が戸籍上判明しても、現実には行方不明の方もいたりします。全員の同意がなければ売ることができないと考えると、気が遠くなりそうです。

 本ブログでも実際の事件を例に、去年8月に取り上げました。興味が湧いたら、ご一読いただけますと幸いです。

 

 ところで、この度、「租税特別措置法84条の2の3第1項」という規定が新設されました。平成30年4月1日から既に施行されています。ただし、期間限定で、平成30年4月1日から平成33年(2021年)3月31日までの3年間に登記申請した場合の特例です。

 内容は、「土地」に関して個人が相続登記を受ける前に死亡した時は、当該死亡した個人を土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を免除するというものです。

 結構、思い切った施策だと思いますが、多くの人が所有する不動産が自宅の土地・建物であることを考えると、建物について税の免除が受けられないのは微妙な印象です。根本にあるのが土地の円滑な利用を促進するためという制度趣旨なので、しょうがないのかもしれませんが。それ以前に、このような制度があること自体周知されていないので、果たして、今後どの程度インセンティブが働いて、相続登記申請が増えるでしょうか。

 

 ただ、相続登記は近々義務化されることが既定路線ですし、早めにしておいた方が後々のトラブル防止にもつながります。今回ご紹介した制度のように、国も後押ししようという意思が感じられます。

 試験的な期間限定の施策も多いので、そろそろ相続登記をした方がいいのかお悩みの方、もっと情報をお知りになりたい方は、お近くの司法書士事務所に相談してみてはいかがでしょうか。

 弊所でも日々、更新された新しい制度情報が蓄積されていますので、有意義な情報をご提供できると思います。