司法書士法人Judicial Scrivener Corporation小山鈴子事務所Oyama Suzuko Office

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レガシー(遺産)

 

太田です。二度目の登場になります。

 

いやあ、暑いですね。なんでしょうか、この異常な暑さは。

皆様、熱中症にはお気を付け下さい。

 

さて、6月の記事で山田が法定相続情報証明制度について触れておりましたので、相続つながりということで、最近取り扱った相続事件についてお話したいと思います。

 

法務省のホームページには、「未来につなぐ相続登記」というタイトルで、相続登記は早めにされた方がいいですよ、という趣旨の記事が掲載されています。

 

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00207.html

 

・・・正直なめてました。

早急に売る必要がなければ、別に慌ててする必要もないんじゃないの?と私自身思ってましたよ、ええ。

 

始まりは事務所に持ち込まれた一通の土地登記簿謄本からでした。そこには、明治時代に土地の権利を取得した、依頼人の方の大伯父(祖父の兄)にあたる方のお名前が記載されておりました。

 

実は、不動産登記というのは義務ではないので、登記簿上、先祖の名前のままほったらかしにされている土地や建物は世の中に数多く存在します。ただ、いざ子孫がそれを処分しようとすると、一度相続登記をして現在生きている人の名義にしなければ、他の人に名義を移せません。登記しなくても法律的には権利は移転するのですが、証明が極めて難しいため実務上、登記が移せない不動産に買い手はつきません。

 

それで、取りあえず相続関係をはっきりさせようということになったのですが、大伯父さんの戸籍謄本を取り寄せてみてビックリ!大伯父さんには奥さんはいるけど子供はいなかったのです!

 

「で、それで何がビックリなの?」と多くの方は思われたかもしれません。

 

ちょっと相続のことをかじったことがある方ならお分かりでしょうが、子供がいない場合、奥さん以外では①両親、②兄弟姉妹の順番で相続権が発生します。ご両親は先に他界されていましたので、今回は②です。

兄弟姉妹が先に亡くなられていれば、その子孫が代わって相続権を得ることになります。今の民法ですと、亡くなられた方から見て「おい・めい」までしか相続権はありません。

しかし、亡くなられたのが昭和のある時期より前だと現行民法が適用されず、生きている方に突き当たるまでどこまでも相続が続いていくのです。大伯父さんは明治生まれの方ですから、時代的に兄弟姉妹は沢山いらっしゃいます。もちろん、奥さんの相続人も兄弟姉妹なので、そちらの子孫の方も奥さんの相続権を承継します。そして、どちらも現在の民法適用時期より前に他界されていました。

 

もうお分かりでしょう。

そうです、ある2つの一族全ての方の親族関係を、江戸後期から平成まで調べ上げるという一大ミッションが幕を開けたのです!

 

北は北海道から南は鹿児島まで、亡くなられた方、結婚して出て行った方など、全国に散らばる戸籍謄本を集めに集め、調べに調べた結果、関係者は300人を超え、相続権を持つ現在ご存命の方だけでも100人近くに上りました。

集めた戸籍謄本は電話帳をはるかに超える程の厚さになり、これを短期間で過不足なく集めるのはプロの我々でも相当大変でした。個人で集めるのはちょっと無理なレベルです。もちろん費用もかなりのものになります。相続関係図を作成したら、天井から床につくほどの長さになりました。

 

この後、さらに全員での遺産分割協議が待っていたのでした・・・。

 

上記は我々でもめったにお目にかかることはない希な事例ですが、初めの方で述べた通り、先祖の名前のままほったらかしにされている土地や建物は多いので、一族が繁栄している家ほど同じ問題が生じる危険性はあります。

きちんと相続手続きをしておかなかったばかりに、たった一筆の土地を売るために何ヶ月、時には何年もの時間と何十万円もの費用が発生することがあるということは、上記の事例を通じて是非知っておいて頂きたいと思います。

その上で、一度、ご自分の先祖の名義でほったらかしにされている不動産がないか調べてみてはいかがでしょうか。

 

ところで、法定相続情報証明制度を利用すれば、今回のようなケースであっても、登記以外の相続手続きには紙一枚提出するだけで済むようになります。他の役所や銀行の担当者もきっとニコニコのはずです。

お、前回からいい感じに話がつながりましたね♪

 

というわけで、決して法務省の回し者ではありませんが、子孫のためにも相続登記はお早めにされておくことをおすすめいたします。

 

相続について分からないことがありましたら、お気軽にご相談下さい。